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成立手続を怠った場合は

成立手続を怠った場合は

全部で5つある社会保険の内、2つが労働保険と呼ばれるものとなっています。
労働保険は雇用保険労災保険に分かれており、それぞれの保険において定義や必要な保険料の額、管轄している行政機関などが異なります
この2つの労働保険を含んだ社会保険は、原則的に個々の保険の加入要件を満たした時点で、好むと好まざるとに関わらず強制加入することが義務付けられています
これは、社会保険があくまで国民の生活水準を支えるための社会保障システムであり、民間企業による私的な保険とは性質が全く違うためです。

労働保険において、加入要件を満たせばもちろん自動的に強制加入となるわけですが、実際問題として、要件を満たした会社、事業主が保険関係成立届といった各種の手続をしなくてはならない、とされています。
労働保険も保険である以上、加入者からの保険料を徴収することで財源を確保しています。ただ、日本全国に無数にあり、また企業として登記していない個人事業などは特にその実態が掴みづらいことから、自ら加入の手続をしてもらうことで保険料の徴収漏れを防いでいるのです。

では、そもそも労働保険の加入要件を満たしていても、保険料を支払いたくないがために各種の手続を怠れば、保険料の通知が来ないので保険料を支払わずに済む、という話になってしまいます。
こういった人や会社が増えてしまった場合、財源を確保することができず、一部国庫、つまり国民の税金から補填しなくてはならなくなってしまうでしょう。
本来支払うべきものを支払わない。すべき成立手続を怠った場合はどのような事態が起きるのか、知っておけば手続を忘れることはありません。

目次

  1. 必要な成立手続について
  2. 怠った場合にはペナルティがある
  3. 雇用保険の成立手続を怠った
  4. 労災保険の成立手続を怠った
  5. 時には莫大な金額になる

必要な成立手続について

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雇用保険と労災保険では、加入に必要な条件が若干異なります。雇用保険の場合は週の労働時間が20時間を上回る場合、継続して31日以上雇用される場合などの条件があります。

労災保険の場合は、一人でも人を雇った時点で、その事業所は労災保険に加入する要件を満たした、ということになります。

各事業主や会社は、これらの条件を踏まえた上で雇用保険に関しては要件を満たした者が出た際、その翌月の10日までに成立手続を。労災保険の場合は、一人でも人を雇用した日、つまり保険に加入した日から10日以内に成立手続を行う必要があります。
成立手続というのは正式には保険関係成立届という書類を所轄の行政機関に提出し、要件を満たした労働保険に加入しましたという報告を行うことを指しています。実際には他にも必要な書類はありますが、最も最初に提出する書類は保険関係成立届なので、ここでは他の手続は割愛します。
大雑把に言えば、雇用保険を管轄しているハローワークも労災保険を管轄している労働局や労働基準監督署も、この成立手続を行ってもらうことによって、どこの会社や事業主が保険に加入しており、保険料の納付や万が一の際の保険給付が必要になるのかを把握しているのです。

それでは、この成立手続を怠った場合について説明を重ねます。

怠った場合にはペナルティがある

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前述の通り、労働保険の事務や保険の給付を行っている行政機関としては、素直に保険関係成立届を提出してもらうことで、スムーズに事実関係の把握を進めることができます。
労働保険に関しては、雇用保険も労災保険も、基本的に一年度分を纏めて前納することになっています。労働保険条の年度は、4月1日から翌年の3月31日までの一年間です。
この期間に従業員が受け取ることになる給与や、業種による保険料率などを加味して計算し、毎年6月から7月にかけて概算保険料の納付を行います。この時同時に、前年度分に前納しておいた保険料の内、足りない部分や払いすぎている部分があれば、調整を行います。

労働保険の成立手続を怠るということは、行政機関が実態を正確に把握できないため保険料の徴収ができないということでもあります。ただし、社会保険という制度の性質上、雇用保険では保障の一部が、労災保険では手続を行っていなくても適切な保険給付を受けることができるようになっています

仮に成立手続を怠った会社から労働保険の給付申請が行われた場合、保険料を支払わずに他人が支払った保険料を使い込むような形になることは間違いありません。
当然、公共の利益にも反することですので、必要な保険関係成立届等を提出しない場合にはペナルティが与えられます。

雇用保険の成立手続を怠った

雇用保険でも労災保険でも、原則的に未加入であったことが分かった時点で、本来手続をすべきだった期間を遡って保険料の徴収が行われます。
雇用保険の場合、未加入が判明してから最大で2年前まで遡り、2年分の雇用保険料の徴収をされます。追徴金も徴収されます。
ここで注意が必要なのは、事業主ではなく被保険者たる労働者の方です。勤め先が不当に成立手続を怠っていた場合、10年働いてから辞職し、失業等給付を受けようと思っても、事実関係を遡れる2年分しか考慮されないのです。

労災保険の成立手続を怠った

労災保険に関しては、雇用保険とは違って人を雇えば強制加入となり、成立手続をしていない期間中も労働者は被保険者として各種の保険給付を受けられるようになっています。
保障の内容もかなり優れていることもあって、成立手続を怠った場合のペナルティに関しても厳しく規定されています。
手続を怠っていたことが分かったら、労災保険の加入要件を満たした時まで遡り、その期間中全ての労災保険料を徴収されます。扱いとしては、未加入だったではなく保険料を滞納していたとみなされるので、追徴金も加算されます。

この上で、成立手続を怠っていたことが判明するまでの経緯や悪質性によってまた別に費用徴収という罰則が適用されます

・指導があった場合

行政機関から、労災保険の成立手続をするようにと指導された上でそれを無視し、その期間中に労災保険の給付を利用するようなことがあった場合、給付金額の100%を徴収されます。

・指導がなかった場合

指導がない、つまりそれまで必要な手続をしておらず、ついに行政機関にバレてしまったという状態です。この時1年以上手続をしておらず、期間中に労災保険の給付を受けた場合は悪質とみなされ、給付金額の40%が徴収されます。

・使用者に過失がある場合

労働者が怪我や事故をするに至った事故に関して、使用者に過失がある、故意であった場合は給付金額の30%を、労災保険の給付を不正受給するために嘘の申告等を行った場合は、給付金額の100%または一部が徴収されます。

その他に保険料を滞納し、督促されているにも関わらず期限内に支払いを行わなかった場合もありますが、こちらでは成立手続そのものは行われているはずなので除外します。

時には莫大な金額になる

成立手続を怠ってからまだ日が浅く、保険給付を利用するといってもごく軽い怪我などで大した出費にはならないという場合、事業へのダメージは少ないです。

ただし、労働者が業務中の事故で死亡してしまったために遺族年金などの給付を受ける、といった場合、追徴金や保険料も合わせると莫大な金額になります。

日本で事業をしている以上、日本の法律に従った行政機関からの徴収を逃れる術はなく、成立手続を怠るメリットもないので、加入要件を満たした時はすぐに手続きを行うのが賢明です。