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費用徴収制度について

費用徴収制度について

日本は民主主義国家であり、法治国家であり、国民の生活に関して政府が最低限の責任を負うための社会システムを作り上げています。

国民の生活を支える社会保障システム、その中核をなしているのが5つの保険からなる社会保険制度です。

社会保険の中には労災保険というものがあります。これは、業務中、ないし通勤中に負った怪我や病気、事故などに対して本人の負担ではなく、全額保険からの負担で治療や保障を行うというものです。
ただし、社会保険がいくら社会保障のためにあると言っても、広く全国民が加入できるような財源がなければ保障をすることなど不可能です。
そのため、保険加入者からの保険料の徴収と、一部国家からの負担金などを利用して財源が用意されています。労災保険の場合は、社員やアルバイトなど、立場の弱い労働者を保護するという性質上、保険料の全てを事業主が負担するようになっています。

世の中にある全ての事業主や会社が善良であり、ミスもなければ問題にはならないのですが、労災保険の加入手続きを行っていなかったり、保険給付の不正受給を目論んだりする相手がいるため、どうしても一定のペナルティが必要になるのです。
労災保険は労働者の権利でもありますので、例え事業所や会社が労災保険の加入手続きを行っていなくても、保険給付を受けることが可能です。

労災保険の保険料、もしくは給付に使用された金額の内、問題のあった給付に関しては事業主からその費用を徴収する。それが、費用徴収制度なのです。

目次

  1. リスクとしての費用徴収制度
  2. 費用徴収の対象となるパターン
  3. 全ての給付に対して徴収される訳ではない
  4. 未手続きの事業主に厳しくなっている
  5. 費用徴収制度からは逃れられない

リスクとしての費用徴収制度

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労災保険において、費用徴収制度が採用されているのは未手続きや悪質な事業主に対するリスクを明確化するためです。

社会保険がいかに国民の生活を守るためにあり、労災保険が使用者の義務と責任として労働者の権利や心身を保護するためにあるといっても、実際に労災保険料という形で支払いを行わなければならないことには変わりがありません。
普段サラリーマンとして、アルバイトとして、パートとして働いている時、毎月の給与から天引きされている各種保険料や所得税について、涙を流して支払いを喜んでいる人はそう多くはないでしょう。
一般的な感覚として、自身の手元からお金が出て行くということを忌避してしまうのは、ある種当然の反応なのです。
とはいえ、労災保険は条件を満たしている以上強制加入が適用される社会保険です。払いたくないから払わないということは決して認められません。

しかし、労災保険は比較的「加入しなければならないものの、敢えて黙っておく」ことができてしまう保険です。
労災保険は保険の給付申請が行われたり、会社に抜き打ちで監査に入ったりしない限り、原則的に自己申告を信じるしかないのです。

実際、誰もが名前を知っている大企業で労災保険の加入をしていませんでしたというのは無理ですが、一人だけアルバイトを雇った個人事業主を完ぺきにマークするのは困難です。
それだけに、きちんと申告をし、加入の手続きも行い、保険料の納付も行っている人に不公平な者に対して、分かりやすいリスク、ペナルティというものを作ることで、より確実な制度の実現を目指しています。

費用徴収の対象となるパターン

費用徴収の対象となるパターンは一定の条件のものと定められています。この中のどれかに該当する場合、パターンに応じた費用を徴収されてしまうということです。

・指導を無視する

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所轄の労働局や、労働基準監督署が労災保険の未加入を発見した場合、きちんと手続きをするように指導を行います。
指導を受けた会社や事業主がその指導を無視し、保険関係成立届などを提出していない間に労働災害が起き、保険給付が行われた場合、使用された費用の全額を徴収されることになります。指導を受けてから10日がタイムリミットです。

・労災保険の加入手続きをしていない

行政機関からの指導を受けていない場合であっても、労災保険に加入しなければならなくなってから1年以上手続きを行っていない場合、給付された金額の4割を徴収されることになります。

・保険料の滞納

労災保険料は、原則として一年分を概算保険料として前納し、年度の終わりに精算する形で保険料を納付します。
この保険料を納付している場合、当然のことながら行政機関から督促状が届きます。督促にも従わず、労災保険料の支払いをしたまま労働災害が起きた場合、給付された金額の4割に、滞納している保険料の割合を掛けた金額を徴収されることになります。
滞納している期間が長ければ長いほど、徴収される額は大きくなります。

・使用者に責任のある労働災害を起こした

例え故意であってもそうでなくても、会社や事業主に過失のある労働災害に関しては、保険給付の内3割を徴収されることになります。
本来、使用者がきちんとしていれば起こるはずのない事故であり、怪我や病気だからです。

・労災保険を騙し取ろうとした

最も悪質なパターンです。労災保険は各種社会保険の中でも保障が手厚いことで知られていますが、この保険給付を不正に受給しようと労働災害をでっちあげたりした場合、費用の徴収が行われます。
支給された保険給付の額の全額か一部を徴収されます。例えば社員が労災ではない怪我で労災保険の申請を行い、会社がそれを労災だと認めたりした場合、双方から費用の徴収が行われます。
簡単に言うと、労働保険詐欺をすれば相応の罰則があるということです。

全ての給付に対して徴収される訳ではない

労災保険の費用徴収ですが、全ての保険給付に対して徴収される訳ではありません。療養給付、介護給付、二次健康診断等給付、特別支給金に関しては請求されません
療養給付と二次健康診断等給付は病院などに支払われるものであり現物支給であること。介護給付は介護認定を受けていることが確定しているので、少なくとも生活に支障を来していること。特別支給金は管理しているのが別団体であるためです。

未手続きの事業主に厳しくなっている

労働局にとっても労働基準監督署にとっても、労災保険の未加入や不正な保険給付の実態は非常に心苦しい問題です。不正に行われた給付はその殆どが正しい保険加入者からの保険料で賄われているからです。
そのため、労災保険の保険関係成立届を提出しなければならないにも関わらず、敢えて手続きを行わないような事業主に対して厳しい対処を取るように動いています。

費用の徴収に関しては、税金と同じで融通のきくものではありません。未加入の期間が長かったりすれば、費用徴収だけで事業の業績が悪化することもあり得ます。
特に実態を掴みづらい個人事業主に関しては、行政が厳しく目を光らせています

費用徴収制度からは逃れられない

労災保険に未加入でいること、事故によって怪我や病気を負った労働者の訴えを無視して労災の認定を行わないでいることなどをすれば、微小ではありますが一時的に資金は浮きます。
ただし、労災保険の給付は加入の手続きがあるかどうかではなく、一人でも人を雇った時点で発生するものなので、実際に怪我や病気をした人が労災保険の給付手続きをすれば必ず問題は明らかになります

結局のところ、労災保険に加入すべきタイミングで手続きを行い、毎年正しく保険料を納付することが最も出費を抑える手段になるのです。
費用徴収は法律で決められています。適切な手続きが必要です。