労働保険.JP
法人支援士業連合会
  <    <  二元適用事業の場合

二元適用事業の場合

二元適用事業とは

日本では、いわゆる労働者、つまり雇用関係にある人に対して、社会保障として2つの保険を用意しています雇用保険労災保険という、纏めて労働保険と呼ばれるシステムです。

この2つの保険は、労働者にのみ適用される保険であり、保険加入の要件を満たしている人が一人でもいれば強制加入が事業所の義務として決められています。
労働者の保護や、万が一何かあった際の保障として活躍する2種類の保険ですが、殆どの企業では、毎日のように保険の給付申請が行われるようなものではありません。

勤続年数が数年ある社員が毎日が辞めていき、事務職や営業、庶務が毎日怪我をして労災保険の給付を求める会社は中々ないでしょう。
しかし、世の中には様々な仕事があり、その実態を考えると、雇用保険と労災保険をきっちりと別の保険として管理しておいた方が面倒がない、という場合もあり得ます。

二元適用事業の場合、雇用保険と労災保険において、特例的に管理を分けても良いと法律で決まっているのです。
二元適用事業に含まれない事業を一元適用事業として認定していますが、実際には特殊ケースである二元適用事業を判別するために、このような決まりが作られています。
重要なのは、二元適用事業の場合、該当するケースも限定的な上に、労働保険に関する手続きの仕方、考え方が一元適用事業と違うということなのです。

目次

  1. 二元適用事業とは
  2. 二元適用事業の目的
  3. 二元適用事業の場合に必要な手続き
  4. 労働保険料の納付と申告

二元適用事業とは

そもそも二元適用事業とは、具体的にどんなものなのかをはっきりとさせなくてはいけません。

日本では国民皆保険制度が採用されており、条件を満たしている以上、保険に入りたくないからという理由で未加入でいることはできません。
保険である以上、労働保険にも保険料があります。そして、その徴収に関しては労働保険の保険料の徴収等に関する法律、通称徴収法で厳密にルールが決まっています。
徴収法の第6章、第39条に、保険の適用事業に関する条文があります。一元適用事業はここでは脇に起き、二元適用事業の条件を並べてみましょう。

  • 都道府県、市町村が行う事業
  • 都道府県、市町村に準ずるものが行う事業
  • 規定の港湾にて運送を行う事業
  • 農林水産業、畜産、養蚕業
  • 建設業

ざっと並べてみたところ、これだけでは良く理解できない場合もあるでしょう。そこで、具体例を交えて説明します。
都道府県や市町村が行う事業として良くあるのは、公立の学校運営などです。
それに準ずるものとしては、私立の学校運営となります。規定の港湾にて運送を行うというのは、東京港や名古屋港といった大きな港を指す、いわゆる六大港湾にて運送業を行っている企業を指します。
農林水産業などに関してはイメージしやすいので割愛しましょう。建設業は、何故と思うかもしれませんが、これは建設業界の特殊な構造性から来ています。詳しくは、後で説明します。

とにかく、これらの事業であれば、雇用保険と労災保険を個別で管理し、保険料の納付や申請に関しても個別で扱う、ということになっているのです。

二元適用事業の目的

では、どうして二元適用事業では労働保険を別に扱う必要があるのでしょうか。
最も分かりやすい例として、先ほど説明を一旦省いた建設業を使って説明します。

08b

一般的な企業を別として、建設業では、毎回働く場所が違うのが当然です。あちらのビルを建設した後はこちらの一軒家をリフォームし、と職場ごとに仕事は変わります。
場所や仕事の規模が違えば、根本的にする仕事は同じであっても、怪我のしやすさは上がります。例えばの話、木造一軒家の一階部分を作るために資材を肩に担いで歩き回るのと、10階建ての高層マンションのために高さ数十メートルで資材を運ぶのでは、危険度は大違いです
建設業は、そもそも職業としての内容からどうしても怪我や事故の起きやすい業種です。一元適用事業のように労働保険として全てをひっくるめて管理していたのでは、労働災害が起こった場合の手続きが煩雑になるでしょう。
雇用保険と労災保険を別個で考えることによって、より個別のケースにも細かく対応できるようになっているのです。

また、建設業は工事の発注主がいて、更にその下にメーカーや元請け、二次請け、孫請けといった形で仕事の外注が次々に行われるのが一般的です。
建設業に必要な技能は幅広く、水道や電気、木工など全ての職人を一つの会社が持っておくよりも、現場に合わせて必要な職人や会社をピックアップする方が安上がりになります。
そのため、雇用保険に関しては元から所属している会社で加入しており、一時的に契約を結んで仕事をする会社では労災保険に加入する、といったことが起こり得ます。

一括管理ではどうにも対応できない状況が起きても対応できるように、二元適用事業では労働保険を分けて考えるのです。

二元適用事業では一つの会社が雇用保険と労災保険という二つの保険に加入している、という考え方をしません。
一つの会社がもう一つあると仮定して、同じ会社が二つあり、それぞれ個別に雇用保険と労災保険に加入しているため、より細かく柔軟な管理ができるという考え方になっています。

二元適用事業の場合に必要な手続き

二元適用事業の場合には、一元適用事業とは別の手続きが必要になります。まず、各保険の加入要件を満たしたら、その日から10日以内に雇用保険に関しては所轄のハローワークへ、労災保険に関しては所轄の労働基準監督署へと保険関係成立届というものを提出しなくてはいけません
これは、労働保険に加入する要件を満たしたので加入をしますという宣言のようなものです。

そして、次に保険関係が成立した日から50日以内に、その年の労働保険料を計算し、概算保険料申告書というものを提出します。
雇用保険の場合は、事業所を管轄する労働局か、日本銀行のどちらかに。労災保険の場合は、労働基準監督署か、都道府県労働局か、日本銀行へ提出します。
この書類の提出は、そのまま保険料の申告と納付にもなるので保険料の用意も忘れないようにしましょう。

雇用保険においては、雇用保険適用事業所としての登録届けと、雇用保険被保険者資格取得届というものを別途ハローワークに提出します。
文字通り、それぞれの保険において二元的に全く別物として手続きを進めるのです。

労働保険料の納付と申告

08c

労働保険料の納付に関しては、正確には年に二回行います。労働保険は4月1日から翌年の3月末日までを一つの期間として考えており、年度明けの6月前後になると納付の通知が来ます
そこで、雇っている従業員の収入に応じて、概算で保険料を計算します。計算書を上記の通り提出し、納付書を貰って納付を行います。

その後、年度が終わったら決算処理をしなければなりません。概算の状態から変化があって保険料が少なかった、多かったという部分を修正して、その年度の労働保険料の納付と申告が正式に完了します。
保険料の納付期限はしっかりと定められており、1日でも超過した場合は追徴金などが発生するため、初めて労働保険に加入する場合は良く注意しておかなければなりません。

二元適用事業の場合はどうしても最初の手続きが煩雑になってしまうため、前もって流れを整理し、滞りなく期間内に手続きを完了できるようにしておくと良いです。
知らなかったと言わなくて良いように、二元適用事業の場合はどうすれば良いのかを知っておきましょう。