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遺族(補償)給付

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日本には社会保障システムがあり、労働者の権利は労働に関する法律と、そして労働保険を始めとした各種制度によって守られています。

労働保険を含む社会保険は広く国民のために生活保障を行うものであり、現実問題として起こりうるあらゆる問題に何らかの保障を行うことができるように整備されています。

ここで一つの家族を例にして考えてみましょう。旦那さんはいわゆる労働者であり、毎月25万円の給料を貰い、専業主婦の奥さんと、可愛いさかりの3歳の子どもと一緒に生活しています。このような家庭です。

昔話のようにこのまま何事もなく人生が進んでいけば良いのですが、一家の大黒柱である旦那さんは仕事中に不慮の事故で亡くなってしまいました。
幼気な子どもと、専業主婦だった奥さんは当然失意のどん底に突き落とされてしまいますし、葬儀や事実関係の確認やらで気の休まる時もないでしょう。
さて、現実的な話をすると、一家の大黒柱を失った時点でこの家族の生活を維持するのは非常に困難になってしまいました。子どもを連れての就職活動は決して簡単なものではなく、親兄弟や行政サポートがあるとしても限界はあります。

多少の貯蓄をしていたので今すぐ生活が破綻することはないとしても、金銭というリアルな問題で困ってしまう訳です。

もともと、旦那さんが亡くなってしまったのは仕事中のことであり、業務中や通勤中の怪我、病気等をカバーするのが労災保険の役割です。

労災保険の保障遺族(補償)給付は、このようなシチュエーションで困っている遺族に手を差し伸べるための給付なのです。

目次

  1. 遺族(補償)給付の受給資格
  2. 遺族(補償)給付の給付金額について
  3. 必要な手続き
  4. 社会復帰促進等事業を併用する

遺族(補償)給付の受給資格

遺族(補償)給付は、通称遺族年金と呼ばれることもありますが、遺族であれば無条件に申請ができるという風にはなっていません。

実は、労災保険というのは保障の内容が手厚くなっており、例えばプライベートで怪我をして病院に行けば3割負担ですが、労災で怪我をした場合は10割全部を保険が支払ってくれるのです。

働き盛り、働いている最中の成人が一人亡くなってしまうというのは、雇っていた会社にとっても、もっと広い意味で日本の社会にとっても大きな損失です。
そのため、遺族(補償)給付では非常に大きな金額が給付として動くことになります。大金が絡むと人は変わってしまうもので、無用なトラブルを起こさないために、遺族(補償)給付の受給要件はきっちりと制度として決められているのです。

そんな遺族(補償)給付には、大別すると2種類の保障があります。遺族(補償)給付と遺族(補償)一時金です。両者の違いと受給要件について確認します。

・遺族(補償)給付

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被保険者の収入によって生活していたことを前提とし、受給要件を満たす者の中で最も優先度の高い人に対して行われる保険給付です。同じ優先度の者が複数いる場合は山分けとなります。

妻、60歳以上か障がいを持つ夫、18歳に満たない子、孫、60歳以上の祖父母、その他55歳から60歳までの夫、父母、祖父母、兄弟姉妹が受給資格を持つ者として判断されます。
冒頭で紹介した家族を例に出すと、旦那さんが亡くなった場合、妻、そして3歳の子どもの両方が受給資格を持つことになります。優先度としては配偶者である妻が最も高いので、残された妻のみが遺族(補償)給付を受け取れます。

・遺族(補償)一時金

上で紹介した遺族(補償)給付の受給資格では、18歳以上の子どもなどはどうなってしまうのか、という問題が出て来てしまいます。当然です。
遺族(補償)給付の受給資格者がいない場合、遺族(補償)一時金と言って、その他に該当する者に纏めて一時金が給付されるのです。他にも、遺族(補償)給付を計算した結果、一定の基準以下の保険給付にしかならなかった場合はより総額の大きくなる一時金の方を受給することとなります。

遺族(補償)給付の給付金額について

遺族(補償)給付の給付金額を決めるに当たって重要なのが、給与から算出される給付基礎日額と、それが何日分貰えるのか、です。

例から引っ張ってくると、おおよそ25日稼働として日給は1万円ということになります。実際には業界の平均年収などを使って計算しますが、ここでは簡略化して説明します。

・遺族(補償)給付

遺族(補償)給付の支給金額は、受給資格者の人数に応じて153日分から245日分まで段階的に変化します。この場合妻と子なので201日分になり、

・1万円×201日分=201万円

は間違いなく遺族が遺族(補償)給付として受け取ることができる、というものです。

・遺族(補償)一時金

遺族(補償)一時金に関しては、若干計算方式が異なります。何が異なるのかと言えば、日額の算出基準です。給付基礎日額が業界平均の年収から金額を割り出す一方、一時金で用いられる数字は算定基礎日額となっています。

これは、ボーナス等の特別な収入を加味して1年間の収入を調査し、それを365日で割って出す、という方式です。日数は遺族(補償)給付と同じく1000日分で、冒頭の家族はボーナスが年に40万円あるとすると、

・{(月収25万円×12か月)+40万円}÷365×1000日分=931万円

となります。実際に遺族(補償)給付や一時金がいくらになるのかは、必要に応じて計算してみないと正確な数字は出せません。何故なら、こうして算出した給付金額から、既に支給されている遺族年金等を除いた額が最終決定額となるからです。

必要な手続き

遺族(補償)給付等を受け取るために必要な手続きは、所轄の労働基準監督署に対して行います。

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例えば冒頭の家族であれば、夫婦であったことを証明する書類、納税の証明など、旦那さんの収入によって生活を送っていたことの証明書類、死亡診断書、会社からの労災を認めるという一筆、その他受給資格を満たすに値する書類と、請求書として所定の書類を作り、労基署に提出するのです。

条件や状況に応じて必要な書類は異なります。一時金の方も必要書類は同様で、加えて言えば例え法的な婚姻関係にある状態でなくても、いわゆる内縁関係であっても、生活の実態として配偶者と同等の受給資格があると証明できるなら手続きは可能となっています。

行政手続きなので何かと書類が必要になりますが、逆に言えば書類があれば法的に、そして公的に故人との関係を証明することができます。
労基署にこれらの書類を渡した後は、給付の結果が出るまで待つだけです。

社会復帰促進等事業を併用する

厳密には労災保険ではないのですが、労災保険の遺族(補償)給付などと一緒に利用される保障があります。それが社会復帰促進等事業の一部である特別支給金です。

これは、簡単に言えばそれまで貰っていたボーナスを基準にして、遺族(補償)給付をもう少し手厚いものにできるというボーナス特別支給金と、そうでなくても貰える給付額の一定な特別支給金の2つで成り立っています。

金額としては通常の特別支給金が300万円と決まっており、ボーナス特別支給金は過去1年分のボーナスから基礎の金額を求め、給付額を算出することになります。

遺族(補償)給付に関しては、大きな金額になるものの、敢えて前払いして貰わない限り、年金の受給と同じように一定額を定期的に受け取ります。

被保険者であった旦那さんが残してくれた年金の権利を、受給資格者が受け継いだと考えるのが良いでしょう。